本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

牛を屠る/佐川光晴

「おれのおばさん」などで注目されている作家が屠畜に携わっていた経歴を語る職歴ルポ。

国大法学部卒、出版社を辞めた後の求職活動で反射的に屠畜業を希望し、埼玉の食肉工場に採用されてから10年半の顛末を語っており、普段は隠されがちな業界だし、その内部を知らせてくれると言う意味では興味深いが、なぜ著者が屠畜を選んだのか、そこのところがよく分からず、何だかモヤモヤする。使命感とか探究心とかではなさそうだが・・・。

危険を伴う職業であり、練達の職人芸が垣間見られるし、屠畜に携わって6、7年目くらいの著者が急に開眼するあたり、あらゆる職業に共通していそうなブレイクスルーと思われて爽快。

余談だが、身内が関係するアングラ劇団にかつて著者夫人が所属していたことが本作中に出ていて驚いた。