本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

おれたちの青空/佐川光晴

おれのおばさん」の続編であるが、ストレートな続きではなく、陽介の施設仲間である卓也を主人公にした中編、恵子おばさんが来し方を振り返る中編と、陽介の進学を短く描いた短編からなっている。

陽介の良き友人である卓也は闊達に見えるが、その生い立ちは不幸この上ない。引き取られた施設の卑劣な職員にいじめられ(このあたりは読んでいても怒りで頭がクラクラする)、相手を半殺しにしたところで恵子おばさんのもとに送られてやっと救われるのだ。

しかし生い立ちから来るトラウマは抱えており、ちょっとしたことで恵子おばさんの施設を抜け出すと、この途次でクラス内の卑怯者と巡り会い、行動を共にする羽目に。そして雪の中を放浪するのだが、ひとつ間違え命を落としかねない状況の中で、自らを見つめ直している。嫌いな同級生との筋立ても、別に共感したり理解し合ったりするわけではないが、それでもなにがしかの心のふれあいがあったようにも感じられてなかなかに読ませた。これだけ不幸な目に遭ってきた卓也に幸多かれと思わずにいられない。

学生演劇にはまって大学を中退し、劇団を旗揚げしたものの長くは続かず、結婚した下級生の夫とは離婚、転がりまくりながら児童養護施設を運営することになった恵子おばさんの生涯もまたドラマチックだし、パワフルで芯の通った生き方が痛快だ。