本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

被差別のグルメ/上原善弘

同和地区出身の著者が、子供の頃に慣れ親しんだ地元の食物をはじめ、アイヌウィルタやニブフなどの北方少数民族、沖縄、在日コリアンと被差別地域の共同作品である焼き肉文化など、単なる「郷土料理」「おふくろの味」」ではなく、迫害される境遇から生まれるソウルフードについてについて著述した新書ノンフィクション。

各地域の食物史について触れながら実地に食べ歩いており、それが実に美味そうだったりする(そうでないものもある)。やや切実な内容を抱えながらも堅苦しい印象はなく、飄々とユーモラスに綴っている印象。このタイトルは編集者の発案で「孤独のグルメ」のヒットによるものだと著者がラジオで語っていた。

徐々に大阪名物となってきているらしい「かすうどん」の食材「あぶらかす」も実は著者の出身地域の食物の由。

著者には同じような題材の「被差別の食卓」もある(十数年前の出版)。合わせて読んでみているところだが、こちらはロマやアフリカ系アメリカ人など、グローバルなソウルフードについて採り上げている。

著者は同和地区を「路地」と呼んでいる。中上健次に影響されたものだろうか。全国の路地を探訪した「日本の路地を旅する」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しており、話題にはなっても当時はテレビ・ラジオからは声がかからなかったそうだが(デリケートな問題なのでメディアが二の足を踏むとか)、今回はTBSラジオのセッション22に出演、小さくとも一歩であるとしている。