本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ときめき昆虫学/メレ山メレ子

虫マニアの会社員ブロガー・エッセイストが、好奇心の赴くままに昆虫についてユーモラスに綴ったエッセイである。

何しろその行動力と好奇心が楽しい。蝶を呼んで産卵させるためにベランダに柑橘類の鉢植えを置き、イモムシの羽化を楽しむ(イモムシレストランは、その後イモムシ狙いのスズメレストランと化すというオチも付く)。アリの巣セットを購入して自宅で観察する。カイコは人間が改良して飛べなくなった蛾だという事だが、「社畜が家畜化昆虫を飼育する」と題してカイコが羽化するまでを観察し(羽化したカイコガはなんとも可愛い)、昆虫食の会合でセミを食べ、昆虫がらみのイベントに出かけてはフィールドで虫集めに精を出し、ダニが作るチーズに惹かれてドイツ出張の際に寄り道する。オタクという感じでははなく、しかし十分にマニアな世界は門外漢にも十分に楽しい。

いわゆる虫屋と呼ばれる世界には疎く、中学生の頃に「ファーブル昆虫記」「どくとるマンボウ昆虫記」などに挫折した記憶があるが、本書は大変に面白く読了した。

ちなみに旅先でふれあった犬に「わさお」と名付け、一大有名犬にしてしまったのも著者らしい。

昆虫食の会合を主宰する人は虫好きであるようだ。野鳥好きが鳥を食べる話が好きなのと共通するのかもしれない(草食性の鴨は美味しそうだなんて話や、戦後の食糧難でヒヨドリを食べたなんて話が出る(笑))。

巻末に虫関連のお勧め書籍があるが、文一の「日本の昆虫1400」が入っているのが唯一所持している昆虫本だった。