本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

島津戦記/新城カズマ 

本能寺の変より三十年ほど前、三州平定を目指す島津家の四兄弟(義久、義弘、歳久、家久)の成長を描きつつ伝奇的要素を盛り込み、非常に気宇壮大な歴史フィクションではある。

思慮深い大人物の義久、勇猛果敢な義弘、典籍に通じる思索的な歳久は同じ母を持つ兄弟で、末弟の家久とは年が離れている。冒頭ですでに大人である義久、幼児である家久はさておき、義弘、歳久の成長が描かれる導入部からなかなかに読ませる。鄭和の大船団の名残やら、いすらあむの姫御前やら、南蛮人宣教師やら、棄教したユダヤ人船長やらが島津家と関わりを持ち、更に謎の一族なども絡んできて伝奇的要素もワクワクさせてくれる。やんちゃな少年から一人前の武将に成長する兄弟の青春も楽しい。

しかしどうも話を広げすぎた感があり、今ひとつ満足感のない結末である。もう少し焦点を絞った方が良かったのではあるまいか。それでも面白かったことに変わりはないのだが・・・。