本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

わたしは菊人形バンザイ研究者/川井ゆう

本邦唯一ではないかとされる菊人形研究者である著者が菊人形について切々と語ったノンフィクション。学術書ではないのでなるべく平易な言葉で書きたいということで、まぁエッセイとノンフィクションの中間くらいのところか。

江戸末期に始まり、昭和初期くらいまでは大変な人気を誇った菊人形興行だが、昨今はせいぜい自治体が主催するくらいで、興行としては成り立たないらしい。幼い頃から枚方遊園の展示を見て育った著者には悲しいことらしく、その歴史と現況をつぶさに記している。

しかし、構成があっちへ飛びこっちへ飛びして散漫だし、菊人形への愛ももう一つ語り足りない感がある。切々と語ってくれれば菊人形を知らない読者に共感させることも出来るだろうに、惜しい。もう少しバンザイを語って欲しかった。

菊人形はとは胴の部分に菊花を着せつけたものというくらいの印象しか持っていないが、骨組みの中に一株一株の菊を植えこみ、しかもそれが着物に見えなければならないというなかなか高度な技であるらしい。かつてはレジャー興行として大人気であったということで、見世物興行という世界にいががわしい魅力を覚える者としては、ちょっと興味を持ってしまった。近くであったら行ってみたいものだ。