本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

図書館戦争/有川浩

図書館の自由を守るために戦う図書隊の活躍を描く近未来ポリティカル・フィクション。このベストセラーを今頃読んでいる(笑)。

昭和の終わりに、権力による検閲を可能にするメディア良化法が成立。出版段階ではなく、流通してからの検閲であることから、図書館側は図書収集の自由を盾に断固として抗い、後に図書防衛隊と良化委員会特務機関との熾烈な抗争に発展していくのだった。

主人公の笠原郁は高校生の頃、読みたかった本を書店で特務機関に没収されそうになったところを、図書収集権を持つ図書隊員に助けられ、図書隊員を志願する。直情的で単純な正義漢・郁を厳しくしごくのは鬼教官・堂上である。苛烈で有能な図書隊員であり、容貌秀麗ながらやや背が低く、堂上に恨みを持つ郁はあからさまに「チビ」と罵っているが、なんだこの超ツンデレは・・・、という展開が期待できる(笑)。映画化された際の岡田准一というキャスティングはぴったりだなあ。

身体能力は優れているが、戦士の適正にはやや欠ける郁のドタバタな成長や、僚友手塚との確執なども折り込み、とても読ませる。戦闘シーンも手に汗握る迫力だ。

それにしても表現の自由を規制する設定は、昨今の状況を考えるとあながち荒唐無稽でもなく、妙にうすら寒い。読書の楽しみを知っており、またその自由を享受し続けたいと願う読者はきっと共感するのだろう。