本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

とっぴんぱらりの風太郎/万城目学

二流の忍者風太郎(ぷうたろう)は、相棒の黒弓にラッキョウを買ってくるよう申し付けたのに、黒弓がニンニクを買ってきてしまったことからケチが付き、御殿の不興を買い、忍者屋敷を放逐されて京の山里で暮らすことに。忍びの出であるひょうたん屋と縁がつながり、ひょうたん屋の下働きのようなことをしているうち、ひょうたんの精霊のような化け物に取り憑かれ、あっちへ行かされこっちへ行かされ・・・。

更に高台院の命令で、ほとんど外に出たことがないという公家の息子ひさご様の護衛を務めることにも。お人好しのでくのぼうという感じのひさご様だが、蹴鞠には秀でていて、連続記録を打ち立ててご満悦。このことが後の伏線になるが、でくのぼうに見えて誠意のあるひさご様との友情がなかなか良い。

元の組織に駆り出されて大阪城攻めに加わり、過酷な下働きをさせられているうちに、忍びが不要になってきた時勢を知り、上の者の思いつきで動かされてきたことに気づく風太郎は、今度は自分の意志で難業を遂行しようとする・・・。

頼りないながらも己の意志で動き始めた風太郎に声援を送りたくなる。ストーリー展開に納得いかない部分もあるが(約束守れよ風太郎)、でもまぁ、熱く七転八倒する風太郎が痛快な快作である。