本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ちょんまげぷりん/荒木源 

江戸時代から現代に侍がタイムスリップしてきて天才パティシエになっちゃったら、というドタバタSF。

仕事と子育てに挟まれ、ストレスの多い日々を送っているシングルマザー遊佐ひろ子の前に、やつれきった侍の木島安兵衛が現れる。当初警戒心を露わにしたひろ子だが、、哀れな姿にほだされて居候させることに。

家事をしない夫に愛想を尽かしたというひろ子の弁に安兵衛は、男が家事をするなどもってのほかと古い価値観を述べるが、一宿一飯の恩義に家事を引き受け、意外な才能を発揮する。やや我がままに育っている友也にも厳しく暖かく接することで良い影響を及ぼしていくし、家庭を任せられたひろ子も仕事に専念できる。

更には菓子作りに異様な才能を発揮し、アマチュアの菓子コンテストで優勝すると、異様な言動と相まってあっと言う間に人気者になり・・・。

タイムスリップしてきた侍の言動はドタバタだが、本人はいたって真面目であり、それがまたおかしい。現代の生活様式を伝授されて馴染んでいく様子もディテールに凝っていて説得力がある。

SFとしてさほど本格的なわけではないが、異様な状況に巻き込まれた人々がちょっとだけ幸せになっていく感じで、ややほろ苦い結末も含めて読後感の良い佳作である。


お、ブレイク前の福くん(友也役)だ。