本・花・鳥(ほん・か・どり)

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高橋贔屓の感慨

男子フィギュアで日本初の金メダルは快挙。表現力も技術力も抜きん出ているが、羽生ファンではない自分としては転倒二回で金かなぁという思いはあった。そうしたらロシアの名コーチ、タラソワが「今回の大会にチャンピオンはいない」という意味のコメントをしていたそうで、納得のできる意見だった。でもまぁ、点数で順位を決めているんだから仕方ない。

印象で6点満点から減点していく旧採点法だったら二回の転倒は相当に印象が悪い。タラソワ女史は旧採点法時代から活躍する名コーチだから、彼女の基準で行けば合格点ではないのだろう。荒川静香はタラソワコーチに師事しいていたが、新採点法で加点の取れるコーチにつきたいということでモロゾフに師事したという経緯がある。

新採点法では何が出来れば何点という加点法だから、その他の取りこぼしが少なかったという意味ではいい演技だったと言うべきか。後半のジャンプはきれいに決まっていたし(採点表を分析した海外メディアでも後半のジャンプが勝因としていたそうだ)。もうちょっと高レベルの争いだと思っていたが、チャンもこのところ不調だったしなぁ。

関係ないがチャンと俳優の橋本じゅんは似てないだろうか(笑)。

キム・ヨナと羽生と、二人続けて金メダリストを育てたオーサーは名伯楽なのだろう。ともあれ日本男子が金メダルを取る時代になったのだ。感無量。

ところで、自分は高橋大輔の美しい演技のファンである。今回の演技では回転不足や両足着氷などで点数が伸びなかったが、大きなミスなく終われて良かった(少なくとも無様な転倒はなかった)。

オリンピックシーズンの世界選手権は今ひとつ目立たない。高橋としてはオリンピックのないシーズンの世界選手権で優勝して引退と考えていたのではなかろうか。そこにチャンが台頭してきて、このニ、三シーズン、絶対王者などというキャッチフレーズでトップに君臨していた。素人目ではどう見ても高橋のほうが上だろっ?と思うような展開でもチャンが上回っていたから、点数の稼げる技術力だったんだろう。そういう意味で高橋は不運だとも思うが、無冠の帝王のかっこよさもある。

彼の入りのポーズは松本竣介の自画像「立てる像」を想起させる。一瞬にして観衆をつかんでしまう存在感と色気は別格だ。美しさのある表現力、切れ味のあるステップ、力みを感じさせないいジャンプ(助走時の沈み込みが少ない)など、どこを取っても素晴らしかった。

現役続行の声もあるが、故障だらけの膝を抱えてそれは気の毒な気がするし、世界選手権で有終の美を飾って欲しいと一ファンは考える。「立たないで もうそれで十分だ」というアリスの「チャンピオン」の一節がついつい思い出されるのだが・・・。


こういう繰り言を贔屓の引き倒しと言うのかしらん(笑)。