30年近く前に書かれたノンフィクション。ずいぶん前から読みたいと思っていたが絶版で、図書館で見つけることが出来た。
タイトルの通り、あちこちを渡り歩く稼業の人間を採り上げている。題材は、競輪選手、錦鯉の仕入れ人、スリ専門の刑事(一日中、電車で移動している)、ラブホテルのベッド納入業者兼ラブホ開業コンサルタント、各地のイベントを回るロボット動物の操作係、潜水夫、国土地理院測量官、養蜂業、プロ野球スカウト、オルガンビルダー、華道指導員。30年前のことだから仕事の様相などはだいぶ変わっているだろうとは思う。
中世の商工民や芸能民など、非定住・非農耕の流浪民の世界に魅惑されているので現代の道々の輩的な興味から読んでみたかったが、せいぜい一、二箇所での仕事に密着してその仕事や人となりを描写しており、流浪感はさほどない。しかし、どの人間もその道のプロであり、その仕事ぶりは興味深い。
そして、登場人物達に寄り添い、あたたかく丁寧に仕事ぶりを綴っていく筆者もまた一個の「旅に暮らす人」なのだなぁと思わせた。旅よりも人物に主眼を置いた印象。