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ヤンキー進化論 不良文化はなぜ強い/難波功士

1961年生まれ、大阪府南部育ちでいわゆる「ヤンキー」を身近に見てきた著者が、ヤンキー的な人・モノ・コトについて、ヤンキー前史から現在のヤンキー状況はどうなっているかまでを考察した新書。

自分が高校生の頃は不良のことをツッパリと呼んだし、昨今は侮蔑的にDQNと呼ばれることもあるが、ヤンキーの語源については、ヤンキー前史の時代に、不良少年が米兵のファッションを真似して粋がっていたからではないか、としている。この言葉は関西芸人が流行らしたような気がするなぁ。

著者はヤンキーを「階層的には下(と見なされがち)」「旧来型の男女性役割(性的に早熟で概して早婚)」「ドメスティック(自国的)やネイバーフッド(地元)を志向」とする。派手好き、喧嘩上等の気合いや根性、縦の人間関係と連帯感なども加味されている。

代表的なヤンキーの暴走族を始め、竹の子族、パンクバンド、フーリガン(熱烈なサッカーファン)、アイドル親衛隊などもヤンキーの範疇に含めて語られている。なめ猫横浜銀蠅などにも言及されているが、「世間は常に銀蠅的なものを常に必要としている」というナンシー関の述懐も紹介されていてなるほどなと思わせる。

ヤンキーメディアについても紙数が割かれているが、Vシネ、実録映画、写真集、実話系、暴走系モータージャーナルなど、実にこの分野には多彩なバリエーションがあり、それがまたヤンキーを再生産しているそうだから面白い。

著者は決してヤンキーに好意的な訳ではない。しかし、ヤンキー嫌い嫌い(ヤンキーを下に見て軽蔑する輩を嫌う)を自称しており、やはり関心を持って観察してきたようだ。大学で教鞭を執る著者には、学生にもヤンキー気質(要約すれば、不良ではないが、品行方正な優等生という訳でもない。いたずらに海外文化を畏怖せず、自国に愛着を持っている。気合いが入っている、と言った感じだろうか)があり、現在のような難儀な時代にはヤンキー気質が有効なのではないかとしている。

また、ヤンキーを蔑視するダメ人間より、車の改造のためであっても体を張って金を稼ぐヤンキーの方がよほどましだと言う。自分から見たことはないが、番組宣伝CMなどでつい目に入ってしまう大家族モノに「少子化の昨今、ヤンキーに限って多産なんだよなぁ」などと斜につぶやく自分などまさにダメ人間の典型である。それだけの大家族を養う甲斐性があるんだしなぁ。

J-POPのヒップホップ、レゲェ、パンクと言った、ヤンキーが愛好するポピュラー音楽についても言及されている。この10年ばかり、この手の流行歌は家族愛や友情や青春を賛美してばかりいて、70年代の四畳半フォークよりよほど所帯じみていると苦々しく思っていたが、ヤンキーの「地元志向」「連帯感(「絆」と言い換えてもいいかもしれない)志向」にはぴったりはまるらしいと気付かされた。確かにJヒップホッパーには元ヤンも多そうだし・・・。

ところで、ヤンキーの諸条件のうち「階層的には下(と見なされがち)」を除いて、「旧来型の男女性役割」「ドメスティック(自国的)やネイバーフッド(地元)を志向」「喧嘩上等」「派手好き」と言ったキーワードで思い浮かぶのは保守派の政治家である。特に某党の共同代表二人なんて正にピッタリ来そうだ(笑)。

余談だが、自分は三流私立高校に通っていたので、深夜に集団ツーリング(笑)をするのが好きな同級生もいたりした。CRSとかルート20とかゴーストとかの団体名が懐かしい。