本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

左京区七夕通東入ル/瀧羽麻子

本好きのためのSNS本カフェにてお付き合いのあるYO−SHIさんhttp://yo-shi.cocolog-nifty.com/が採り上げておられて興味を持った本。
http://yo-shi.cocolog-nifty.com/honyomi/2012/10/post-5444.html



京大と思しき大学に通い、春には就職が決まっている女子大生の花を語り手にした恋愛小説。活動的でおしゃれで気の強い花は最近失恋したばかりである。様々なことに興味を示し、恋人を最優先にしない花に男の方が傷ついて去っていったのだが、どうもこのくだりは某不動産会社CM「ぼくとM菱地所のどっちが大事?」を思い出させる(笑)。
 
朝食に食べたブルーベリーでTシャツを汚してしまった花は、代わりにおしゃれなワンピースを着て大学へ行くが、ばったり会った親友アリサに目を付けられ、合コンに誘われる。そして、合コンであった変わり者の数学科学生龍彦に惹かれていくのだった。 

数学マニアである龍彦の変人ぶりが際立っている。人あたりはよいが、何かに打ち込むと病的に熱中し、栄養失調で倒れてしまうほどに周りに目が行かなくなるのだ。この壁に深く傷つく花だが、その壁をどうやってこじ開けていくのかが読みどころか。

親友アリサもなかなかに楽しい。花と同じ高校出身だが、高校の頃は親密ではなく、京都の別の大学に進学してからの友人である。アリサの恋人もまた理数系の変人(研究対象の大腸菌に入れ込んでいる)で、「大腸菌に負けるわけにはいかない」と拳を握りしめるのであった(笑)。

龍彦の親友ヤマネとアンドウもやっぱりさえない理数系だが、これまた風変わりでなかなか楽しませてくれる。次回作はヤマネが主人公らしく、これも楽しみだ。

京大小説と言えば森見登美彦万城目学が思い浮かぶ。本作の学園祭で、野外で鍋をつつくコタツが出現しているのは韋駄天コタツへのオマージュかと思ったが(笑)、京大学祭では鍋コタツが実際に出没することをYO−SHIさんにご教示頂いた。
 


本カフェ
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