本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

いとみち 二の糸/越谷オサム 

祖母仕込みのきつい津軽訛りを話すために超気弱、超内向的な高校生いと(しかも小柄で、小6と変わらないくらいだ)は、自分の引っ込み思案を矯正するためにメイド喫茶でのアルバイトを始めてしまう。そして、風変わりだが気のいいメイド喫茶の人々に囲まれ、得意の津軽三味線も活かして少しだけ成長するというユーモラスな青春小説が前作「いとみち」http://d.hatena.ne.jp/suijun-hibisukusu/20120507/p1である。因みにいとみちとは、三味線を弾いているうちに爪にできる筋のこと。

二年生となり、親友が写真同好会を立ち上げため、いとも部員として参加することに。そのために生じたいざこざなども描かれるが、優しく諭してくれる先輩メイド(28歳で子持ちだが、22歳と年齢を偽って働いている(笑)。いとに注ぐ視線は慈愛に満ちて厳しく、母のような存在である)の「おめも金の怖さを知ったな」というセリフがなんとも深い。

後輩の石郷鯉太郎は、気は優しくて力持ちを地で行くような大男である。相撲の才能はあるが人と争うことが嫌いという気弱さを持ち、そのあたりでいとと共通している。超内気なふたりの恋模様もこれからの読ませどころか。

身の回りに少しずつ変化が訪れ、次には高3になる。いとの将来が描かれるであろう「三の糸」が楽しみだ。