本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

最期の声/ピーター・ラヴゼイ

傲慢で頑固で協調性がなく、上層部からは疎まれているが勘と粘り強さで最終的に事件を解決してしまう優秀な刑事なのでそれなりに評価が高いピーター・ダイヤモンド警視の活躍をユーモラスに描くシリーズの七作目である。
 
今回はダイヤモンド警視の良き伴侶ステファニーが殺人の被害者となり、あろうことか警視自身が容疑者と目され、捜査を受けることに。上層部や本部から派遣されてきた捜査責任者からの掣肘を受ける中、孤独な戦いに突き進んでいく。

頑固親爺のダイヤモンド警視に対し、ステファニーは温厚で快活で美しく、不遇な時代の警視を支えてきた(シリーズ第一作「最後の刑事」では上層部と対立し、一時はバース警察を離れたことがある。後に復職)。冒頭、この夫婦の情愛の細やかさが描写されている分、ステファニーが亡くなってからの警視の悲しみが痛々しい。しかも、殺人容疑までかかってしまうのである。

当初、ピーターが逮捕した組織犯罪者者の復讐かと思われたが、その後、以前にピータの部下だった刑事の妻ウェザーがが同じように殺されており、共同戦線を張りながら犯人をたどっていくのだ。

論理的な道筋よりも体当たりで事件の真相に迫っていく捜査はハードボイルド的であるが、二転三転するストーリーの面白さは飽きさせず、更にそれぞれのキャラクターが秀逸である。陽気で思いやりがあって面倒見が良く、メアリー・ポピンズの異名を取ったパトリシア・ウェザーの人物の描き方が上手すぎる。

この作品は、刊行されたのは随分前だが、ステファニーが被害者になるとあっては読む気になれず、9年経ってからやっと手に取った。面白さは相変わらずだが、この先どうなるだろうか。著者も高齢だしなぁ・・・。