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裏閻魔2/中村ふみ

幕末の動乱で死にかけたところを、鬼込め(体内に鬼を呼び込むとこで願いが叶えられる)という禁忌の彫り物によって不老不死を獲得してしまった宝生閻魔の苦悩に満ちた長い生を描くダークファンタジー裏閻魔の第二弾。

時代はすでに終戦後である。かつては妹として面倒を見、年頃になり、高齢となった奈津は姿を消し、閻魔の事情を知る後援者もそろそろ生を終えようとしている。長い生は辛いばかりだ。

戦後の混乱期、閻魔は行きがかりで浮浪児善哉を助けてしまう。閻魔に懐き、中途半端に鬼込めに興味を持ち始めた善哉をそばに置いておけず、後援者の手元に預けようとするが出奔、これが後々災厄を招くことになる。めぐる因果の糸車という感じで、過去の因縁が閻魔の望まぬトラブルを招き寄せるのは体内に宿る「鬼」のなせることか。

直情径行で短気だが情け深い閻魔に対し、中途半端に情けをかけるから余計な因縁を招くのだと批判するのは閻魔の兄弟子夜叉である。夜叉は閻魔以上に魔性に生きる、冷酷で優雅で皮肉で快活なやさ男だが、閻魔に殺されたいと願っている。が、この魔物も時折妙な人間くささを見せたりして、なかなか見せ場を作っている。

閻魔が自分の半端な情けのために却ってひとを傷つけるのではないかと恐れているあたり、前作同様に平井和正ウルフガイシリーズ(現代に生きる狼男が、人間を糾弾しながらも、やさしさ故に助けてしまいトラブルにはまり込んでしまうSFハードボイルド)を思わせる。年代的にも影響を受けていそうだがどうだろう。

閻魔がたぐり寄せられる因縁は相当に血なまぐさい結末を迎えるが、読後感が悪くないのは閻魔と他者の関係の描き方に救いがあるからか。三作目で完結らしいので楽しみだ。