80年代後半に一世風靡したジプシーキングスのベスト盤。
哀愁あふれる塩辛声のカンテ、情熱的狂躁的戦慄的な曲弾きギター、グルーヴをかき立てるパルマ(手拍子)など、フラメンコは実にひとを熱狂させる要素を持つ音楽だが、そこにラテンパーカッションが加われば(このようなスタイルをルンバ・フラメンカというらしい)、もういやが上にも盛り上がらざるを得ない(笑)。
フラメンコの生まれ故郷アンダルシア地方の酒場(タブラオ)などで奏でられるフラメンコよりはだいぶ薄味になっているのだろう。しかしだからこそポピュラーミュージックとして受け入れられたんだと思うし、ヒットするワールドミュージックなんてだいたいそんなものだろう。
塩辛声のカンテにはまるでイスラーム音楽のような節回しが感じられるが、実際、イスラムとジプシーの音楽の融合で生まれたものらしい。イベリア半島はイスラーム勢力に占領されていたこともあるし、地中海を挟んでアラブアフリカと向かい合っていることを考えればさもありなんと思う。民族音楽のジャンルとしてはアラブ・アンダルースという括りもあるそうだ。ヨーロッパの民族音楽なのに何ともオリエンタルな旋律なのがフラメンコの大きな魅力なのだなぁ。
ポルトガルも環境としては同じようなものだったろうに、かの国で生まれたのがファドだったというのも文化的差異があって面白い。
本ベスト盤の中には知っている曲が多数含まれているが、ファーストアルバムからの収録が多いんじゃないだろうか。1stの完成度がそれだけ高かったってことか。
往々にしてベスト盤の後半には安易な曲が多いものだが、本作にも安直なmixとかカヴァーとかが目に付く。曲数を増やす必要があるから致し方ないのかな(笑)。
ただしCMで耳にすることが多いVolareは、原曲を生かしつつ自家薬籠中のものにしているところがカヴァーの傑作だと思う。我が国では、カンツォーネのヒット曲としてよりジプシーキングス版の方が馴染みが多くなっているんではなかろうか。
BamboleoやDjobi,Djobaなどヒット曲が多いのお得な一枚だが、ひとつ失敗だったのはInspirationが収録されていなかったこと。鬼平犯科帳のエンディングテーマに使われたときには、なんてぴったりなんだとスタッフのセンスに驚いたもんである。本作では似たような感じのMooreaで我慢するか・・・(笑)。
Inspiration
Djobi,Djoba(ブンブンとうなるベースがファンキー(笑))
安直なカヴァーだけどHotel Californiaは妙にツボにはまる