本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

うたうひと/小路幸也

様々なミュージシャンをモチーフにした音楽小説集。モデルになったミュージシャンもほぼ想像できるが、そのエピソードは架空だろう。

歌もギターも超一流だったミュージシャンが事故入院した病院で語る来し方(なぜ特別の女性が消えてしまったか)、袂を分かってしまった人気デュオのその後、ピアノを弾きながら踊るように歌う盲目の美人歌手はなぜ最高のバラードを残して引退してしまったのか、鎧のような衣装で吹きまくる腕っこきのホーンバンドのメンバーがアイドルと恋仲になって・・・、売れないハワイアンバンドのコミカルな演出が受けてアレヨアレヨという間に人気者となり、世界的な人気バンドの前座を務めたときのエピソード、酒場のピアニストからスーパースターになった男の約束など、どの話も見事に「心あたたまるいい話」になっている。

あざといくらいに見事な落ちを用意していて、読後感は最高。さすが東京バンドワゴンシリーズの著者だ。このあざとさに我慢できなければ、ご都合主義過ぎ!と罵ることになるかもしれないが・・・(笑)。