本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

武士道エイティーン/誉田哲也 

文庫化につき再掲。

武士道シックスティーン武士道セブンティーンに続き、剣道に打ち込む二人の女子高生を描いた痛快な青春小説である。

前二作は、狷介で孤高で猪突猛進で傲岸なまでに自尊心の高い磯山香織と、おっとりのんびりしながら芯に強いものを持っている河本早苗(お気楽不動心と呼ばれる(笑))の、友情とも敵愾心とも絆とも言える様な繋がりを交互に語る形で綴っていたが、本作では、香織の師匠で、締め技も投げ技もある古武術のような剣道を教える桐谷玄明の来し方とか、香織を慕ってきた後輩の田原美緒の葛藤とか、早苗が属する福岡南高校剣道部顧問の吉野(常に酒臭さを漂わせるバンカラ教師)の青春のつまづきとか、高校生のときからモデルとして活躍してきた早苗の姉の純な恋愛とかが外伝のように挟み込まれて読ませるし、それぞれのエピソードが少しずつつながっているのも上手い。

剣道に懸けて生きる真摯な人間たちがユーモアを交えて描かれ、読み心地の良いスポーツ青春小説の快作である。