本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

鷺と雪/北村薫 

「街の灯」「玻璃の天」に続き、戦前の上流家庭のお嬢様とそのお付きの女性運転手(容姿端麗で頭脳明晰で腕も立つというスーパーウーマン)が探偵となり、日常のちょっとした謎を解いてみせる連作ミステリーシリーズの三作目で、本作で直木賞を受賞。

おそらく相当に戦前の資料を読み込んでいるのだろう。当時の風俗を事件の謎にからめて非常に読ませる。表題作の仕掛けとお嬢様の淡い恋心をからませた手際は見事で、余計な描写は抜きにしているところがかえって効果的だ。

戦争の影がしのびよる、しかしまだ贅沢が許される階級の生活や戦前の風俗を情緒たっぷりに描いているところが本シリーズの大きな魅力だが、ただ、すでに作家として高名になっている著者に今更直木賞かなぁと思う。どうせならば同じ水準の若手作家発掘に傾注すればよいのにと思うのだが・・・。