本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

「お笑い」日本語革命/松本修 

著者は長年「探偵!ナイトスクープ」の制作に携わってきたプロデューサーだが、言葉に対する並々ならぬ関心を持っており、「アホとバカの境界を探してください」という番組への依頼から全国のアホバカ語の分布に関する法則を推定した「全国アホ・バカ分布考」という名著も著している。


本書では、「どんくさい」「マジ」「みたいな。」「キレる」「おかん(おとん・おじん・おばん)」などの普遍化について、お笑いタレントやバラエティ番組がいかに影響を及ぼしてきたかをつぶさに例証している。因みに「千と千尋の神隠し」の台詞としても使用される「どんくさい」は、著者の担当した「ラブアタック」での上岡龍太郎のレギュラーの台詞であり、この普遍化は上岡の台詞を編集しないで放送し続けた結果だと自負している。ただ「どんくさい」の意味は分かるとしても、やはり「どんくさいやっちゃな」とか、どうしても関西ニュアンスの言葉のような気はするのだが・・・。

「みたいな。」普遍化の功労者はなんと言ってもとんねるず、しかも石橋貴明だろうが、これはとんねるずと仲の良い放送作家玉井貴代志の、会議における口癖だそうだ。企画を説明していてこれはやばいなと思ったとき、すべてをご破算にする感じで「みたいな。」を利用していたらしいが、実にすばらしい発明だと思う。さらにそれで笑いを取れるわけだし・・・。「とか」「○○の方」など、強い断定を避けることを好む日本人の婉曲表現にも適っていて一気に普及したんだと思う。みたいな・・・(笑)。

かつての大阪の庶民は自分の両親を「お父ちゃん」「お母ちゃん」と呼んできており、「おかん」の興隆はどの辺から起こってきたのか、というのも検証している。若い人の多くが自分の母親について「おかん」を使い始めたのはこの20年ほどであり、それをダウンタウンの功績としている。自分的には、「おかん」も「おじん」も「おばん」も中学生の頃から知識としては知っていたが、「おとん」は「おかん」に伴って生まれたこの十年ばかりの新造語かと思っていた。しかし、昔から使われていたようで、この二十年ほどで一気にブレイクしたということらしい。

言葉に関する考察を、分かりやすい例を引いて気軽に読める言語エッセイだ。