子供の頃に親しんだ名作児童文学の読み直しモードに入っており、これも35年ぶりくらいの再読だろうか。今で言えばYA向けの讀物になるだろう。
カッレ・ブルムクヴィストは食料品店の息子で、ホームズやポアロに憧れて日々探偵活動に明け暮れ町の治安を守っている(つもりの)名探偵であるが、良しのエーヴァ・ロッタ(パン屋の娘)やアンデス(靴屋の息子)と夏休みを満喫する普通の13歳の少年でもある。ある日、エーヴァ・ロッタの母親のいとこがふらりと現れて、パン屋の居候になるが、これがどうにも怪しく、カッレは舌なめずりせんばかりに探偵活動に邁進するのだった。
楽しさ一杯の13歳の夏休みを描きながら、そこに犯人追跡のサスペンスを盛り込んでおり、伏線も利いて立派な探偵小説である。明晰な頭脳で犯人を追い詰めていくカッレが痛快だし、(妄想上の)血みどろの戦いを繰り返す仲良しの仇敵シックステンらとのバラ戦争も楽しく、少年小説と探偵小説の見事な融合だ。