本・花・鳥(ほん・か・どり)

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浮世袋 国芳一門浮世絵草紙4/河治和香

「侠風むすめ」「あだ惚れ」「鬼振袖」に続く、奇想の絵師・歌川国芳の娘でやはり絵師の登鯉(とり)の青春の苦悩を江戸情緒たっぷりに描いた国芳一門浮世絵草紙シリーズの四作目。

まだ二十歳を過ぎたくらいの年齢だろうが、江戸時代ではすでに年増であり、加齢を実感している登鯉ちゃんに、新場の小安という気になる男が出来た。だが、気があるのかないのか自分でもよく分からない懊悩を抱えているうちに、己の出自が明らかになってきたり、病気を抱えることになってしまったりで、新たな苦悩を背負い込むことに。

このシリーズでは反骨で頑固で子供っぽくて情愛の深い国芳のキャラクターも痛快だが、娘思いもことさらで笑わせて泣かせる。何だか切ないハッピーエンディングの感じは、そろそろシリーズ終盤だろうか。