岩波少年文庫版(小松太郎訳)で、この児童文学の傑作を三十五ぶりくらいに再読してみたがやはり傑作だった。
エミールは母と二人暮らしの実業学校生(12歳くらいか)で、母親をとても愛しており、責任感の強い優等生だ。ベルリンの祖母を訪ねるにあたって母親から託された140マルク(エミール親子にとっては大金である)を列車内で盗まれたエミールは、犯人と思しき山高帽の紳士グルントアイスを追跡するが一人ではいかんともしがたく、途方にくれる。
そこに声をかけてきたのがグスタフ(クラクションを持ち歩く、乱暴者だが気のいい少年)で、エミールの災難を聞くと男気を発揮して仲間を集める。ここに少年探偵たちが集結するのだが、頭脳明晰な教授、律儀に電話番を務める火曜日くん、エミールの従姉妹で活発なボニー・ヒュートヒェン、鋭い観察力を見せるエミールの祖母など、主要人物たちはみな魅力的だ。
尾行の遂行中、好奇心から沢山の子供たちが集まってしまい、作戦の変更を余儀なくされる探偵たちだが、この子供たちが最後にはグルントアイスを追い詰めるのに一役買っており、少年たちの団結心も心地よい。やっぱり正しい少年たちを描かせるとケストナーは上手いなぁ・・・。