本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

西の魔女が死んだ/梨木香歩 

中学一年の加納まいは、学校で仲間はずれにされ不登校となったことで、祖母の家に預けられる。祖母はイギリス人で、自然豊かな環境の家で草花やハーブを育て、ナチュラルな生活を送っている人だ(ターシャ・テューダーとかベニシアさんとかを思わせる)。そして、我が家系は自然と共に生き、特異な力を発揮する魔女の家であると述べ、まいは魔女修行(と言っても、無闇に慌てたり心を動かされたりしない精神的な修養である)をすることに・・・。

映画化もされたので話の大筋は知っており、自然と共に癒されていくのだろうなぁと思っていたが、それだけではなく、近隣の粗暴な中年男に対する恐怖や反感に囚われるまいの心も描かれ、まいはどうやって再生していくのか興味を持たされる。

スピリチュアルなものを肯定しすぎていることに対してやや違和感を持つが、祖母の約束の果たされる場面はドラマティックだ。読みどころなのは、まいと母、母と祖母の、親愛でやや辛辣な関係かもしれない。それぞれ生きている時代が違うことで、価値観も異なり、反発があったりもするのだが、それはそれで親子の縁である。

まいの後日譚「渡りの一日」も鳥好きとしては興味を引かれた。まいと風変わりな友人ショウコとのやりとりが絶妙で、吉田秋生の作品を思わせた。