本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

風の向くまま/ジル・チャーチル

ジル・チャーチルはコージーミステリーで人気の作家だが、本作は1930年前後の都市郊外ヴォールブルグ・オン・ハドソンをを舞台にしたユーモアミステリーシリーズの開幕編。

主人公はロバートとリリーの兄妹。二人は資産家の家庭に育ったが、大恐慌で父親は没落して自殺、残された兄妹は贅沢な生活に別れを告げ、つつましやかに健気に生きていた。そこへ大伯父が亡くなり、莫大な遺産を相続することに。しかし、この遺産には曰くがあって、そう簡単には裕福にはなれない二人である(笑)。

兄のロバートは快活で享楽的な男だが、見た目ほど軽薄ではなく、妹思いでなかなかいい奴だ。そしてリリーは聡明で活発、この手のストーリーには打って付けの主人公たちだ。

大伯父の屋敷に住み着いた二人だが、大伯父は実は殺害された疑いがあり、彼らもまた容疑者のうちに目されていることを知ると、猛然と謎解きに挑む。謎解きに対してはさほどびっくりするような仕掛けもないが、それなりに伏線が張ってあり、ほほう、こういう結末になったかという感じ。謎解きよりも、やや癖のある好人物たちの動きを楽しむミステリーかと思えたが、シリーズということで、先も読んでみたいとは思う。