本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

自転車ぎこぎこ/伊藤礼

大学の定年間際になって自転車通勤を始め、すっかりその魅力に取りつかれてしまった著者が自転車であちこち探訪するエッセイ「こぐこぐ自転車」に続く第二弾である。

著者の自転車は速く走るためのロードレーサーではなく、クロスバイクだったり、ダホンのフォールディングバイクだったり、のんびり楽ちんに走るためのものであり、そこがよんでいて楽しい。ドロップハンドルに体を直角に曲げて乗るタイプの自転車で速度を極めるような自転車エッセイはあまり好みではないのだ。

自転車仲間はみなリタイヤした身の上であり、「天気がいいからどっか行こうよ」などと誘いだす辺りはまるで小学生の夏休みである。ただ、小学生と違って金と暇があるからもっと贅沢だったりするのだが・・・。本書でも、ずいぶん遠くまで輪行している。

稚気あふれ、ユーモラスで、自己に都合よく理屈をこね回す文章は、「坊ちゃん/夏目漱石」などを思い出させて楽しい。自転車の快楽を知らしめてくれるエッセイである。