本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

東京番外地/森達也

小菅拘置所、東京タワー(フランク・ザッパが飾られている蝋人形館のマニアぶりが凄い!)、山谷、芝浦食肉市場など、東京に住む人間が普段意識を払わない、或いは敢えて黙殺しているブラックホールのような場所や地域を旅して歩いた探訪ルポ。タブーに踏み込むのを得意とする著者らしいが、編集者の発案であるそうで、そのあたりでややインパクトに欠けるかもしれない。

東京大空襲の慰霊法要が行われている横網公園のルポが一番印象的だった(折しも三月十日が記念日だ)。資料館は関東大震災復興記念館と共同であり、「史実を風化させることなく」「この記憶を語り継いで」という割に、その史実や記憶の詳細はどこにも語られていないと憤る。自分もよく知らないしなぁ・・・。

後書きに「書くかどうかは別にして、やっぱり僕は、真中より周縁に魅かれてしまう。多数派よりも少数派の中にいるほうが、何となく居心地がいい。小さなもの、少ないもの、淡いもの、寄る辺ないもの、減りつつあるもの、脆いもの、切ないものを、大事にしたい。番外地を切り捨てたくない。もっといろんな声を聴きたい。もっといろんなものを見たい。だから旅はまだ続く。」とあるが、この気分は非定住民好きの自分の気持ちと近い。あえてタブーに踏み込みつつ、淡々と事実を伝える森達也が気になるのはこの後書きの気分に共感するからだろう。