本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます![鳥取環境大学]の森の人間行動学/小林朋道

鳥取環境大学の動物行動学教授が、研究室の動物や自然豊かなキャンパスに出没する動物たち、また、ドタバタと駆けずり回る人間たちをユーモラスに綴った生物である。

ヘビやらネズミやらリスやらが跋扈する教授の研究室は、向かいの部屋の若い女性講師からはアナざー・ワールドと呼ばれているらしい(笑)。タヌキに発信機を付けてGPSで行動を追ったり、羽の骨の折れた鳩を連れて散歩したり、ヘビに指を飲み込まれてみたり、そのドタバタは大変に微笑ましい。

昨今の生物学は、遺伝子中心の分子生物学的な手法が脚光を浴びがちのような気がするが、ここにあるのは、生物を観察して生態を研究するという昔ながらの生物学のように思える。多くの動物に寄せられる愛情は、ドリトル先生かムツゴロウ氏かという感じだ。

動物から敷衍して人間の行動を探るのも著者のテーマらしいが、擬人化というところでなるほどと納得させられた。動物に対し、人間に対するのと同じような思い入れをして行動を推測することは、狩猟の成功に大きく貢献するそうだ。植物に関しても「たとえば子どもに対するように、その気持を想定して植物を育てる人は、種類によって異なる植物の習性をよく理解・記憶し、育て方も上手な場合が多い。」とあるが、「植物に名前を付けて呼んでやると生育がいい」という都市伝説は、或いはこのあたりから由来しているのかも、と思った。

生き物好きの人にはおすすめの好エッセイ。