本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

黒い悪魔/佐藤賢一

10年ほど前はアレクサンドル・デュマばりの波瀾万丈西洋時代小説を主に書いていた佐藤賢一だが、本作はそのデュマの父親の描いた評伝歴史小説である。

仏領ハイチで白人貴族と黒人奴隷の間に生まれ、長じてフランス共和国軍の将軍となり「黒い悪魔」と恐れられたデュマの父親の一代記は息子の小説のように波瀾万丈でわくわくする。

「奴隷にはもどりたくない」という一念でフランス革命の共和主義に傾倒し、ナポレオンの登場で人生を翻弄されるが、有能な軍人ぶりと最後まで節を曲げない生き方が痛快だ。


続編に「褐色の文豪」「象牙色の賢者」