本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

カイシャデイズ/山本幸久

数十人規模の内装リフォーム会社ココスペースで働く個性豊かな社員たちを楽しく描いたユーモア小説である。

出色は何と言っても営業チーフ(係長クラス)の高柳で、強面の容貌、ひとに教わるのも教えるのも下手と公言する協調性のなさ、自分勝手、セクハラまがいの行動など、企業人としてはマイナス要素ばかりのはずなのに、憎めない笑顔で笑う、愛嬌のある中年男である。そこそこ有能で、結局は人好きのするキャラだ。

その他、経理・庶務などの裏側から会社を支えて、社員すべてから頼られる統括室長大屋女史の可愛らしさとか、将来は社長と思い込んでおり(社長セミナーなどにも自費で参加している)、人気のある高柳を疎んじる(本当はやっかんでいる)同期の江沢の滑稽さとか(部下にエザッチと呼んでもらいたがる(笑))、昭和の二枚目風の現場監督とか、芸術家気質の設計デザイナー(女性恐怖症)とか、愛すべき、稚気あふれる登場人物たちがとても楽しい。

「仕事、楽しいですか」というフレーズが随所に出てきてこれがおそらくテーマなのだろうが、中心的な高柳は他者の目から見ると「仕事を生きている」ようで、楽しむでもなく苦にするでもなく、当たり前のこととして受け入れているということか。

ココスペースは若者たちが一から成長させた会社であり、社長たちの若い頃の、サークル活動の延長のごとき奮闘を見ると、例えば「本の雑誌風雲録/目黒考二」のような楽しさがある。仕事を楽しんでいるかどうかはともかく、みんなココスペースを愛しているんだろうなぁと思わせた。

いつもの著者の作風どおり、読後にほんのり幸福感に浸れる小説である。