本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ガール・ミーツ・ガール/誉田哲也

傲慢で生意気で傍若無人で奔放で一本気で純情で、強烈なオーラを放つ柏木夏美がバンド仲間の死の謎を追いかけた「疾風ガール」の続編である。

頼りなくも誠実なマネージャー宮原の猛烈なアタックによって巨乳専門のフェイス・プロモーションでのデビューが決まった夏美に、儚さと女性らしさが売りのシンガーソングライター島崎ルイとのコラボ話が持ち上がる。公私ともにルイのパートナーだったプロデューサーとの別離からプロダクション移籍の話も出ていて、それをフェイス・プロで引き受けるということなのだが、夏美は島崎ルイが好きではなく、しかしある取引を条件にルイのバンドを引き受けるのだった。

タイトルの通り、野放しの夏美と、か弱いお嬢様っぽいルイが友情を育んでいく小説である。レストランで伴奏しているのを聴いて夏美が惚れ込んだピアニスト井場(かつて大ヒットを持っていた歌手だが、現在は楽器のメンテナンスを本業にしている)に欠点を指摘された夏美は押しかけバイトとして食らいつき、その過程でルイとも分かり合っていくが、井場は何やら弟子に対して理不尽な修行を課す剣豪みたいだ(笑)。

変態で天才ベーシストのジンも再登場するし、ポップで痛快で楽しいバンド青春小説だが、作中歌の歌詞が青春パンクのようで安っぽさがちょっと気になる。あと、この表紙イラストは頂けねぇなぁ。

それにしても、スーパーテクニックの老練セッションドラマー池上“ゴンタ”淳一ってどうなんだろう。博打の借金で首が回らないという設定だが、本家ポンタ氏はこの扱いでいいのか(笑)。

タイトルの「ガール・ミーツ・ガール」はハリウッド流ツンデレ「ボーイ・ミーツ・ガール」の文字りだろうが、ちょっと内容が分かりすぎて難点。