本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

暗く聖なる夜(上・下)/マイクル・コナリー 

ロス市警ハリウッド署のはみ出し刑事ハリー・ボッシュを主人公にしたシリーズの一冊だが、本作から刑事を辞め、私立探偵として登場している。

ベトナム戦争従軍の過去を持つハリー・ボッシュは、独自の規範と正義感から行動しがちで、組織からははみ出しているが有能な刑事である。また、警察内の暗部にまで立ち入って汚職などをあぶり出してしまうため、上層部に疎まれ「くそ集め石」などという名誉ある汚名まで頂戴している。

「シティ・オブ・ボーンズ」でロス市警を退職したボッシュは私立探偵となっており、過去未解決だった事件(映画会社の女性スタッフが猟奇的に殺害されている)を独自に再捜査してみることに。ボッシュの行動律では「死者を代弁する」という訳だが、元の職場の上層部からは横槍が入り、911後に強権化したFBIからは悪辣な圧力がかかってくる。それでも折れないボッシュは実にかっこいい。

複雑に絡まった事件を単純化し、真相にたどり着くまでが実にスリリングだし、ハードボイルドに付き物のリリシズムも堪能できる。元妻エレノア・ウィッシュ(かつてはFBI捜査官で現在はラス・ベガスのギャンブラー)への思慕など実にホロリとさせるが、最終場面はちょっと余計だったような気も・・・。