本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

狸の夫婦/南伸坊

笑う茶碗に続いて、風流酔狂な夫婦シンちゃんとツマ文子の日常を描いたエッセイ集。

どうでもいいことを軽い文章で綴るこの手のエッセイは過去に多数書き手があり、どれを読んでも誰かの亜流になってしまいそうなのだが、本書がじんわりほんのりと楽しいのは、重箱の隅を突ついて「面白いこと」を見つけ出す能力故だろうか。

各駅停車をタコ焼き定食と聞きまつがえたり、シンちゃんが嵐山光三郎の「西行と清盛」の装丁を依頼され、電話を受けたツマが『「西行と木登り」ですね。』と確認したり、ベッドメーキングが趣味で小さなしゃもじで苦労しているシンちゃんに「コレ買ってきたよ」とツマが大きなしゃもじを送ってくれたり、お気楽極楽夫婦の幸福感が漂う話がいっぱいである(笑)。