本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

赤めだか/立川談春

立川談志の弟子で立川流真打である著者が、高校を中退して談志に入門し、紆余曲折を経て真打になるまでを面白おかしく描いた自伝エッセイである(因みに昨年あたりの新聞には談春が談志の芸の継承者であるらしいことが書かれていた)。

天才の誉れ高い談志だが、わたし的には傲慢で偏狭で奇矯な、どこがそんなに良いのかと思う落語家である(普通に面白いと思うだけだが、これはまぁ鑑賞力不足なのだろう)。しかし熱烈なファンが多いし、弟子の書いた文章(談春の他に、談四楼や志らくも文章が上手い)を読むと、圧倒的なオーラを持っているものであるらしい。そんな師匠への愛や、三歳年上の弟弟子で先に真打昇進を果たした志らくとの確執や友情(何とも笑える)、柳家小さんに破門された談志の師匠への思いなどが、切なく、コミカルに綴られている。

立川談志というエキセントリックな天才の繊細さが特に印象に残るが、芸というものは狂気と繊細さなくして成りたたないんだろうなぁと思う。

小さん→談志→談春と続く芸の遺伝子や、落語に対する思いの深さなど芸談としても面白いし、落語に関わる者同士の師弟間の交感やねじくれた愛など、読みどころがたっぷりだ。

談春は談志から根多を四つしか教わっておらず、また談志も同様に小さんから四つだけ教わったらしい。弟子になるとは、型を受け継ぐのではなく、センスや生き方やスタンスを学ぶことなのかもしれない、と思った。