本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

俳風三麗花/三田完

そろそろきなくさい匂いが漂い始めている満州事変ころの東京を舞台に、中堅俳人 秋野暮愁の句会に集う三人の女性の句作や恋や描いた句会小説。

ちゑ(大学教授の娘)、壽子(医専学生)、松太郎(浅草芸者)の三人の描き分けが面白く、戦前の女性らしい雰囲気が出ている。ちゑは暮愁を思い、壽子は同級生からと思われる差出人不明の雅な恋文に心をときめかせ、松太郎は若い歌舞伎役者に熱を上げていて、三人の句会での成長と共に、それぞれの恋の行方も重要なモチーフとなっている。

世にも稀な句会小説という感じで、小父さんたちにまじって句会を楽しむ闊達な女性たちの姿が面白かったが、軍国主義化の風潮と相まって、俳句界の生臭さなども描かれており、段々に暗い雰囲気になってくる後半はやや重い。最初の一編だけで良かったんじゃないかと思わせた。句会の出席者の俳句はすべて作者の創作によるものなのか、いかにもありそうな句を幾つも並べたものである。