本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

カレンダー・ボーイ/小路幸也 

小中を共にした同級生二人が同じ大学の教授と事務局長になっており、この二人が、48才の意識を保ったまま小学5年生の自分に戻るタイムスリップを日ごとに繰り返す。そして、3億円事件にからむ同級生の悲劇を繰り返させるまいと奮闘するのである。

大学教授・三都充(イッチ)がタイムスリップした先の5年生の自分たちを語り、48才の現在を事務局長の安斎武(タケちゃん)が語るという形で交互に物語は進む。時代に影響されて語り口調が小学生に戻るのと裏腹に、豪放で清濁併せのむような中年男の対比が面白く、過去を改変したことによって現れる現在の歪みに戸惑いながら奮闘する二人もつい応援したくなる。

ただ、同級生を救ってハッピーエンドと言うだけではありきたりで詰まらないし、どうオチを付けるのかとは思っていたが、うーん、こういう結末でしたか。これがこの作品の特色なのかもしれない。

ノスタルジーとミステリーを絡める手腕はさすが。