本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

峠 慶次郎縁側日記/北原亞以子

富山の薬売りが碓氷峠で追いはぎに襲われて逆襲し、谷底に突き落としてしまう。自分のしたことが恐ろしく、名前を変えて江戸に潜んでいる薬売りと所帯を持った女にも過去があり、ちょっとした罠や落とし穴を回避出来るか出来ないかが人生の峠になっていることを秘めたタイトルである。

行方不明になった亭主を捜して江戸に出てきた女、身持ちの悪い男、盗賊団などがからみ、表題作はちょっとサスペンス風味の中編だが、相変わらずしみじみと読ませる。何だか山本周五郎の短編を思わせるようになってきたなぁ・・・。