本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

カワセミの森で/芦原すなお

本作より以前に出版されている「山桃寺まえみち」の主人公ミラちゃんが高校生時代に遭遇した連続殺人を顛末を描く青春ミステリー。ポプラ社ヤングアダルト向けミステリー叢書「ミステリーYA!」の一冊。この作者は、「青春デンデケデケデケデケ」で直木賞を受賞しており、青春小説や少年小説の書き手だと思っていたが、最近は何冊もミステリーを出しているようだ。

父親が出奔した後、母が地道な公務員と再婚し、複雑ではあるがさほど不幸でもない生い立ちをした桑山ミラは、妙に年寄り臭い話し方をするおやじ少女である。大人びて、冷静で、ややひねくれていてなかなか素敵なキャラだが、とある財閥の令嬢サギリがミラに憧れて転校してきてしまうと言うのが話の発端。

不思議な力で財力を得たとされるサギリの先祖には、百年後には借りを返さなければならないと言う契約があり、更にサギリ自身にもサイコホラーな性情があり、サギリの母は継母であり、という、なかなかゴシックホラーな展開だが、ミラのキャラがキャラなので、物語はユーモラスに進んでいく。夏休みにミラが招待された別荘で連続殺人が起こるという、これもある意味正統な筋運びである。

全体的にはポップな筋運びだが、一家を覆う陰謀が明らかになる展開だけはやや暗鬱だ。エンディングが切ないなぁ。

それにしても、読みどころを書いてはいけないのだから、ミステリーの紹介は難しい・・・(笑)。