本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

比類なきジーヴス/P・G・ウッドハウス 

おそらく戦前と思われるイギリスを舞台にしたユーモア小説で、イギリスではかなりの人気作品らしく、シリーズ化されている。

語り手は貴族のどら息子バートラム・ウースター(バーティ)。一応オックスフォードを卒業しているらしいが、定職もなく遊び暮らせるいわゆる高等遊民なのだろう。バーティの召使いが主人公であるジーヴスで、慇懃かつ主人思いのこの男が類いまれなる叡智をもって、主人の危機をたびたび救うのである。

バーティの友人リトル・ビンゴも伯父からの小遣いで暮らしている、バーティと似たような道楽者だ。惚れっぽい性格をしており、ちょっと行き会った女性に片っ端から一目惚れしてはバーティをドタバタに引きずり込む。厳格なアガサ伯母さんは、道楽者のバーティを何とかまともにしようとして縁談を持ち込んだりするが、そう言った、バーティがはまり込んだ泥沼から引き上げてくれるのがジーヴスなのだった(笑)。

基本的には主人思いのジーヴスだが、服装に関しては保守的で、バーティの購入する奇抜なファッションが気に入らず冷たい戦争をしている時もある。楽しくも妙ちきりん主従関係が何とも可笑しく、これがこの小説の魅力だが、余裕のある者にとってだけ優雅だった時代の雰囲気という感じだろうか。

やや辛辣なユーモアはイギリスならではのものか「ボートの三人男/ジェローム・K・ジェローム」なども思い起こさせる。