本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

変身/嶽本野ばら

どうしようもない不細工男がある朝目覚めたら二枚目に変身していて・・・、という物語。。

親からさえ愛想を尽かされるような不細工男・星沢皇児は、「風と木の詩竹宮惠子」で美に目覚め、アナクロで耽美的な、ほとんど相手にされない少女漫画を路上で売り続けている。

今まで、熱狂的な一人の読者ゲロ子以外には見向きもされなかったものが、ビジュアルを利用したプロモーションによってあれよあれよという間に売れ始め、ついにはメジャー誌でのデビューにこぎ着けてしまう。

外面は醜くとも心は美しい皇児は、としまえんの歴史あるカルーセル回転木馬)のエルドラドをこよなく愛しており、このあたりの蘊蓄が語られる場面は「下妻物語」でのロリータファッションへの思い入れと同じであろう。

皇児の作品にも大きな影響を与えたこのカルーセルだが、鬱陶しい皇児に共感してくれる女性は少なく、変身して後の人生の歯車が少しずつ狂い始めるのが・・・。

広告の惹句に『「下妻」テイスト』とあったような気がするが、あそこまでぶっ飛んではおらず、また痛快でもない。かといって耽美的な小説群とも違うようではあるし、中途半端な印象だった。