本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

放擲〜

読んでいた二冊組時代小説の下巻に入ったところで、あまりの煩雑さに放擲してしまった。

冒頭はスリリングで面白かったのである。ある大藩に仕掛けられた秘訓を巡り、二人の権力者がひそひそ話をしているのだ。これが発動して役に立つのは五十年後か百年後かという感じで、非常にワクワクさせたのだが・・・。

物語は、兄の若死にで家を継いだ大藩の執政を主人公に、幕末の動乱をどう乗り切るかが主題として描かれている。未熟ながら勝ち気で向こう見ずな主人公に好感が持てるし、彼が手足として使っている密偵組織の設定も面白いのだが、いかんせん幕末史の解説が多すぎて、教科書を読まされているような気分になる。

時代背景や筋運びのモチーフとして必要なのは分かるが、あからさまに説明するのではなく、物語の一部として書き入れ、読者を飽きさせないのが作家の手腕というものではないだろうか。

せっかく伝奇めいた冒頭が期待を持たせたのに残念。