本・花・鳥(ほん・か・どり)

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金春屋ゴメス 異人村阿片奇譚 /西條奈加

「芥子の花 金春屋ゴメス」改題。

近未来の日本(北関東地方)に独立国として存在する「江戸」を舞台に、非道・冷酷・暴力の噂が絶えない女傑・ゴメス親分(馬込寿々(マゴメスズを略してゴメス)率いる長崎奉行所(裏金春)が活躍するバーチャル時代小説。前編の「金春屋ゴメス」は第17回日本ファンタジーノベル対象受賞作である。

今回は、「江戸」から阿片が輸出されていると日本政府から抗議があり、町奉行所、長崎奉行所に摘発の檄が飛んでいるという発端である。

今イチ頼りないながらも正義感あふれる主人公・辰次郎は、異国市でサクという、東南アジア系の麻衣椰村から出てくる饅頭売りの少年と知り合う。かつて村同士のいざこざから父親が流刑に遭い死亡したサクはゴメスを深く恨んでおり、裏金春に殴り込んでくるが、これをかっさらっていったのがゴメスと反目する北町奉行・筧末森である。

そして、筧家とサクの祖父にはつながりがあり、更に麻衣椰では芥子の花を咲かせる祭が行われていたことから筧に芥子栽培の疑いが持たれる。そして疑惑にまつわる諸々を調べるために辰次郎は流刑島に潜入し危険な任務を遂行するのだった。

何度ぶちのめされても親分に立ち向かっていく辰次郎が熱い。締めの場面ではかなり冷酷なこともするゴメスだが、悪を憎む正義漢であり、親分子分の絆も読みどころである。

辰次郎と、ゴメスの元に配属された三芳朱緒という美貌の女性剣士との行く立てなども絡み合い、今回も文句なく面白いエンターティンメントに仕上がっている。

結末に「江戸」の危機が提示されているので、続編も楽しみだ。