本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

こぐこぐ自転車/伊藤礼

大学教授を定年になる頃に自転車通勤を始め、自転車生活にどっぷり浸かってしまった1933年生まれの70代壮年が、東京を縦横に走り、高齢の自転車仲間たちと房総、北海道まで足を伸ばした記録を綴る自転車エッセイ。

一日100kmくらいの走行はしてしまうらしいから、大したものだ。箱根を「押し」で登ったり、碓氷峠登坂を志すも途中で体調をおかしくしてタクシーで引き返したりという失敗もあるが、普通の高齢者では考えられないくらい活動的。

ユーモラスで飄々としてへそまがりな文章はいかにも東京っ子という感じがして楽しいが、「〜のであった」という文末が多すぎて、使い方が効果的ではない。作家・伊藤整の子息だそうで、文才を受け継いだのか受け継がなかったのか・・・(笑)。

この人、一度NHK教育の福祉関係の番組で自転車に乗っていたのを見たことがあるが、歌舞伎役者のような、実に端正な顔立ちのおじさんだった。見た目スマートでかっこよく、長距離を走れるほど健康で、まったく高齢化社会のお手本のような人だ(笑)。