本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

歌川国芳

NHK教育知るを楽しむ「ギョッとする江戸の絵画」は、岩佐又兵衛荒木村重の息子である)、葛飾北斎伊藤若冲など、奇想の画家を美術史家の辻惟雄が案内するもので、最終回は歌川国芳だった。

怪奇・猟奇や色鮮やかな豪傑、役者絵など、さまざまな絵が残っているが、国芳というと「見かけはこわいがとんだいいひとだ」という不気味滑稽な絵を一番に思い出す。裸の人体で男の顔をかたどっているのだ。

花や果物や魚で肖像画を描いたアルチンボルドの絵と同じ発想だなぁと思っていたが、アルチンボルドの影響なのだそうである。江戸の画家は新しもの好きだ。

猫芳と言われるくらいに猫が好きだったそうで、猫が主体になった絵もいろいろとあり、擬人化された猫が妙におかしかったりする。


役者絵をわざと落書き風に描いた物もあるが、天保の改革で贅沢が禁止され、役者絵も御法度になった結果、落書きなら贅沢じゃあるまいと開き直った故であるらしい。反骨精神旺盛だったようで、残されている自画像を見ると、なるほど偏屈そうだが、でも剽げたようにも描かれている。





故・杉浦日向子女史の名作「百日紅」は、葛飾北斎と彼を取り巻く人々を、滑稽かつ情緒豊かに描いた傑作だが、主要な登場人物である歌川国直の友人として、少年時代の国芳が登場している。これが、前髪立ちの小僧の癖に妙に偉そうで大人びていて笑わせる(笑)。



この名作を読んだのはついこのあいだでした(汗)。熱烈な杉浦ファンである長尾武之介さんに勧めて頂いたもので、大変感謝しております。