本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

入江泰吉

昨日、テレビ東京系列の「美の巨人たち」で採り上げていた入江泰吉は、大和路の美しさを撮り続けた写真家である。

焦点を当てていたのは「斑鳩の里落陽」という作品だが、法隆寺と夕日と雲のコントラストが、胸を締め付けるような郷愁を醸し出している。奈良の記憶などないはずなのに・・・。
(↓のウェブページの中程に当該写真)
http://www1.kcn.ne.jp/~naracmp/ncmp_j/j04wa/jwaco_irie.html


写真というのは「真実を写す」だけのものではなく、「より美しい真実を作る」ものだと思う。入江泰吉を採り上げた別の番組では、醜い開発を写さないよう、雪に隠れるのを待ち受けて写した一枚を見たことがあるが、カメラで絵を描いているんだなぁ・・・。

斑鳩の里落陽」の、この雲と夕日が現れるまで、どのくらい待ち続けたものか。別の、磨崖仏にかかるしだれ桜の写真について、伝統美を愛した随筆家白州正子が「五,六年も待ったのか」と思いつつ質問してみたら、三十六、七年も待ち続けたと言うことである。腰を据えて対象と向き合って来た強烈な覚悟が伝わってくる話だ。

堪え性のない自分には、とても考えられない・・・(笑)。