本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

下妻物語・完/嶽本野ばら

強烈に痛快で面白かった青春小説の傑作「下妻物語  ヤンキーちゃんとロリータちゃん」の続編で、「ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件」という副題が付いている。あのすっとんきょうな二人の続編が読めるのは嬉しいが、何故殺人事件なのだろうか。

二人が東京へ行った帰りのバスに、ヤンキーイチゴの先輩亜樹美さん(引退したレディースのヘッド)が乗り合わせていて、夫の竜二が亡くなり、墓を建てるための里帰りだと知らされる。この車中で亜樹美の知り合いのヤクザが殺されるが、亜樹美さんには乗客の証言でアリバイがあり、最初に嘘を吐いてしまったイチゴが不利な状況に・・・、というミステリー仕立てである。

桃子の身勝手さ、根性の悪さには磨きがかかり、担当の刑事さえ翻弄されている。最初、ややもたつき感があったが、中盤からはギャグもからめて絶好調に飛ばして一気呵成の面白さ。

シブさ、義理、人情を信奉する、熱くてクサくてダサい走り屋男が登場する。警備員で竜二のマブダチというセイジという男で、これがイチゴと意気投合して笑わせる。本格ミステリーマニアを自称するこの男は、自分が事件を解決すると力んでいるが、愛読書が三毛猫ホームズだというのが可愛い。

桃子へのお洋服への愛は前作と同じだが、BABY,THESTARS SHINE BRIGHTに就職して、本格的にアパレルの道へ進むことを決意する。パリコレを目指しましょうと磯部様に迫るのだ。東京へ旅立つ桃子の独白と、イチゴの餞別が切ない。

痛快な友情物語は新たな季節を迎え、それぞれの人生を歩み出そうとしている。この辺はとても心地よかったが、なぜ殺人事件なのだろうという疑問は尽きない。