本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

フラッシュ/カール・ハイアセン

フロリダの豊かな自然を愛し、環境を守るためなら非常識で過激な行動も辞さない善人と、俗悪な観光業者・開発業者とのトラブルをテーマにスラップスティックなミステリーを書き続けるカール・ハイアセンの、「HOOT」に続くヤングアダルトノベル。海水浴場に汚物を垂れ流しているギャンブル船に腹を立てて沈めてしまい、逮捕された父親の汚名を晴らさんと奮闘努力するノア少年の活躍を描いている。

ノアの父親は、不正、環境汚染など、自分にとって許せないことには我慢が出来ず、過激な行動に奔る短気な性癖があり、それ故に船長免許を取り上げられている。母親はごく常識的で、あまりにも桁外れな父親に愛想を尽かしかけており、離婚の「リ」の字なども持ち出されてやきもきする子供たちなのである。このあたり、「サウスバウンド/奥田英朗」の父親を思わせるが、あそこまで強烈ではなく、また強くもない。繊細で優しい父親でもあるのだ。

ギャンブル船のオーナーは当局と癒着しており、なんやかやと言い逃れを繰り返して、父親の先走りだけが笑い者になっている。ノア少年は、闘志の固まりのような妹と共に策を練り、この事実を証明しようと奮闘するのだった。

この二人の頼もしい助っ人になっているのが謎の老人で、タフで精悍で正義漢のところはクロコダイル・ダンディーのようだ。裏の世界で生きてきたようだが、漫画のような活劇人生を送っており、何ともかっこよい。

ノア少年は特に強くもないし、ギャンブル船オーナーの馬鹿息子に付け狙われたりしているが、自然を守る心と、名誉を重んじる誇りと、あえて苦難に立ち向かう少しの勇気を持っていて好感が持てる。この辺はハイアセンの大人向けドタバタミステリー作品と同じ構造だ。やきもきさせてカタルシスが待っているという、実に上手い物語作りだと思う。

少年の正義感が非常に気持ちよい一冊だった。