(本人の言うところによれば)どうでもいいような微罪なのに判事の悪意によって二年間の獄中生活を余儀なくされた著者が、収監された初日からを詳細に綴った獄中日記。さすが、転んでもただでは起きない(笑)。
終始一貫して自分は嵌められたのだと主張し、家族への愛情と感謝を縷々綴っているのは、ややいい子ちゃんかなという気もする。大体、売春婦とのスキャンダルが問題になった人なのだし・・・。
他の受刑者たちについて語っているのが興味深いが、受刑者というのは、特異な閉鎖空間における特異な人々なのだから興味深くて当たり前だとも思う。
蛍光灯から電力を取り出す特殊な技術を語る奴、
事業に成功してはそれを手放し、忙しさのために離婚する羽目になった男が、現在の恋人が大麻の売人一家の一員だったため、ついファミリービジネスを手助けして成功させ、逮捕されてしまった事情、
リスナーと呼ばれる犯罪者の世話役の虐待にさらされてきた過酷な経験、
きちんとした教育を受けていれば能力を発揮できるような優秀な受刑者、
などが手練れの筆致で綴られている。微罪なのに重罪犯と一緒にぶちこまれた普通人への義憤はいかにも政治家らしい。
全体をダンテの神曲になぞらえて、この次は煉獄篇があるらしく、これも読みたいものだ。