本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ドミノ/恩田陸

東京駅を舞台に、和菓子の老舗「どらや」の紙袋を取り違えたことから起こる騒動を描くスラップスティックなサスペンス。アイディアは映画「おかしなおかしな大追跡」だろうが、もっとシニカルだ。

爆弾を仕掛ける過激派、句友とのオフ会を楽しみにしている実直な老人、人気のスウィーツに執着するOL、一方的に別れたいプレーボーイ、何としても月末のノルマを達成して契約の書類を本社に届けたい保険会社、オーディションでバトルを繰り広げる子役親子など、実に多彩な登場人物がドタバタに参加する。

あらゆるトラブルを乗り越えて契約書類を時間に間に合わせる保険会社ご一行の行動は、「建売温泉住宅峡/かんべむさし」に収録されていた短編(タイトルは失念)がヒントになっていそうな気がするが・・・。

コミカルで滑稽で、一応大団円を見るのだが、単純なハッピーエンディングではないあたりが恩田陸だろうか。一部の間に、恩田作品は終わり方が中途半端で分かりにくいという評判があるが、分かるような気がする(笑)。

それにしても、SF、ファンタジー、ミステリー、ホラー、青春小説、スラップスティックと、実に多才な作家だなぁ・・・。